ハンドル操作についての補足説明 (もう少し突っ込んだ理論を知りたい方のために) |
実は先のハンドル操作を説明する内容を4年ほど前、旧サイトの方に掲載したところ、教習所業界関係者の方々よりかなりの反対意見を頂きました。反対意見の中で残念ながら私が納得できるような理論を得ることができませんでした。 教習所業界のプロライダーにある方にもハンドルオートバイの旋回操作に関し操作に関し、何故体重移動だのステップ加重だのを唱えてしまう人が多いのか、自分なりに研究をして得た結果を記しておきます。 オートバイの旋回操作に最も重要な操作は、ハンドル操作であると言えるのは間違いありません。ハンドルを放してしまえば、どんなに体重移動しようと荷重をステップにかけようと、僅かなバンク角しか得ることはできません。 ところがこのような実験を行うとジャイロ効果に関し非常につかみやすいと思います。直進するオートバイで、体重移動などなく、左右の加重が中立の状態から、ハンドルから手を放して片方のハンドルを指で軽く押してみると、オートバイは僅かな力で力を加えた側に急激にバンク角をつけ始めます。これはいわゆるジャイロ効果の影響で、回転物は入力に対し回転方向の90°遅れた方向に出力が発生する原理のためです。 例えば右側のハンドルを進行方向に押すと、前輪の前側が左に移動する力になります。その力はジャイロ効果により90°遅れた方向つまり前輪の下側が左に移動する力として出力されるのです。しかし、前輪の下側は地面によって位置が固定されてしまっているので、その反射効果として前輪の上側が右に倒させる力となって現れます。そして車体は右バンクをするのです。 バンク角がつくと、さらにその動きがジャイロ効果の影響で前輪は回転方向へ90°遅れた方向に力を発生するので、今度は前輪の前側が右に移動します。つまり右にハンドルが切れるのです。 ジャイロ効果は全ての回転部分に発生する力なので、実は固定されている後輪にも発生し、スイングアームを介してフレームにしなりを与えるほどの力となって発生することもあります。 またエンジンのクランクシャフトなどもかなりのジャイロ効果を持っていますので、エンジンの回転方向が他のメーカーに対して逆回転のスズキのオートバイに独特の乗り味があるのもこのためなのです。 と、まあだいぶ話は脱線しましたが、人車一体で走行するオートバイはこの旋回に必要なハンドル操作の入力がニーグリップや腹筋及び背筋にかかる力に比べあまりにも弱いので、初心者やある意味ベテランと呼ばれている人なども、自分がどのように操作しているか理解ができていない部分があるというのが本当のところではないかと思います。 確かに車体のバンクが始まると、それに自分の体を追従させ、ステップなどに加重がかかったような形になったり、バンクしますから体の軸がずれてたりすると上半身に斜めに旋回Gがかかったりしますから、それが体重移動というような錯覚を起こさせてしまっているものと推測されます。 オートバイの設計に関わる人の中で当たり前の話でも、一般のライダーにはなかなか聞こえてこない話でしょうし、ましてや一般的な教習所の指導員の操作に関する勉強量では、その本当のところはなかなか伝えられないというのが実情でしょう。 このため、本当の意味で正しい知識を教えてもらって二輪免許を手にしている人も少ないということになるかと思います。ベテランと呼ばれるライダーですら、旋回中に車体のバンクを起こし、速度を落としつつ停止するためにどうすればいいかを説明する際に、「旋回方向にハンドルを切り足してみてください。」なんて言うと私は、ベテランさんからもすぐ変人扱いされます。「そんなことをしたら余計に倒れて危ないじゃないか!」なんて言われちゃうんですよ。 そこで、私の理論を証明するために、まずやって見せて明らかにベテランさんの技量より遥かに高いものを見せ、聞く耳を持たせてからでないと、なかなか聞いてもらえません。それでも納得していない人にはどのような考えを持っているか問うのですが、明確な回答が返ってきたためしはありません。ま、それは仕方ないことだと諦めていますけど。 このため、低速バランスにしても、高速コースにしても、ブレーキングにしても私自身が常に考え、研究し、それに基づいた訓練を実践していかないと、折角の正しい理論が理解されず、結局大多数の推論による間違った認識の常識が生まれるのです。 手前味噌ばかりで恐縮ですが、10年以上前にこのジャイロ効果による操舵技術に関し、自分なりの理論を当時のモーターサイクリスト誌やオートバイ誌などに出ていた、ジャーナリスト連中に言ってみたのです。 案の定そこでは、ほとんどの方にあまり感心されなかったのですが、大ベテランのオートバイジャーナリストの方が、「よくそこまで研究したね私も同じ考え方だよ。」なんて、私よりだいぶ目上のジャーナリストが1人だけ感心されていました。 私以上に更に突っ込んだ研究をされている方、いらっしゃれば是非更なる話をご一緒させて頂きたいと思っています。是非ご一報くださいませ! |